「親が高齢になってきたので、自宅をバリアフリーにしたい」「自分自身の将来に備えて、段差や手すりを整えておきたい」。そんなふうに考え始めたとき、気になるのは費用と使える補助金ではないでしょうか。
バリアフリーリフォームは、要介護・要支援の認定を受けている方であれば、介護保険の住宅改修費として最大18万円(自己負担1割の場合)を受け取れる制度があります。さらに、自治体独自の補助金や税制優遇を組み合わせれば、自己負担をかなり抑えられる可能性があります。
ただし、介護保険を使うには「工事前の事前申請」が必須で、これを知らずに先に工事をしてしまうと全額自費になってしまいます。制度の仕組みと手続きの流れを事前に把握しておくことが、損をしないための第一歩です。
この記事では、バリアフリーリフォームの箇所別費用相場から、介護保険の申請手順、自治体補助金との併用方法までをわかりやすく解説します。ぜひ最後までお読みください。
バリアフリーリフォームと聞くと大がかりな工事を想像するかもしれませんが、手すりの設置や段差解消など、ひとつひとつは比較的小規模な工事が中心です。
まずは「どこにいくらかかるのか」と「介護保険を使った場合の自己負担はどのくらいか」を箇所ごとに見ていきましょう。
介護保険の住宅改修費の対象となる5つの工事について、それぞれの費用目安は次のとおりです。
■ 手すりの設置(1か所あたり2万〜10万円)
廊下・トイレ・浴室・玄関など、移動の安全を確保するために最もよく行われる工事です。L字型やI字型など形状によって費用が変わります。
■ 段差の解消(1か所あたり2万〜15万円)
玄関の上がりかまち、廊下と居室の境目、浴室の出入口など。スロープの設置や床のかさ上げで段差をなくします。
■ 滑り防止のための床材変更(1か所あたり3万〜20万円)
浴室やトイレの床を滑りにくい素材に変更する工事です。廊下をクッション性のある床材に張り替えるケースもあります。
■ 引き戸等への扉の変更(1か所あたり5万〜20万円)
開き戸を引き戸やアコーディオンドアに変更します。車いすの方が通りやすくなるほか、ドアの開閉時に体のバランスを崩すリスクを減らせます。
■ 洋式便器への変更(10万〜30万円)
和式トイレを洋式に変更する工事です。便座の高さ調整や暖房便座・ウォシュレットの取り付けも含まれることがあります。
これらに加えて、工事に伴う壁の補修や下地処理などの「付帯工事」も介護保険の対象に含まれます。
介護保険の住宅改修費は、上限20万円までの工事費に対して、所得に応じた自己負担割合(1割・2割・3割)を差し引いた金額が支給されます。
たとえば、自己負担1割の方が20万円の工事をした場合の計算はこうなります。
●工事費20万円のうち、9割の18万円が介護保険から支給
●自己負担は2万円
つまり、自己負担1割の方なら、最大18万円を受け取れるということです。自己負担2割の方は最大16万円、3割の方は最大14万円が支給額になります。
工事費が20万円を超えた分は全額自己負担です。たとえば工事費が30万円かかった場合、20万円までは介護保険が適用され(自己負担1割で2万円)、残りの10万円は自費となるため、合計の自己負担は12万円になります。
「手すりだけ」「トイレだけ」の部分的な工事であれば、介護保険の上限20万円以内で収まることも多いです。ですが、住宅全体をバリアフリー化する場合は、20万円を超えるケースがほとんどです。
たとえば、玄関・廊下・浴室・トイレに手すりを設置し、段差を解消し、浴室の床材を変更し、トイレのドアを引き戸にする。こうした一連の工事を行うと、合計で50万〜150万円程度になることがあります。
この場合、介護保険でカバーされるのは20万円分まで(自己負担1割なら自費2万円)ですが、残りの工事費については自治体独自の補助金や税制優遇を活用して自己負担を減らせる可能性があります。具体的な方法は「自治体の補助金と税制優遇で自己負担をさらに抑える」の章で解説します。
費用の目安がつかめたところで、次は介護保険の住宅改修費制度の仕組みを詳しく見ていきます。
「なんとなく聞いたことはあるけど、具体的によくわからない」という方が多い制度です。対象となる工事の範囲、支給額の計算方法、そして要介護認定をまだ受けていない場合の対応まで、ひとつずつ確認しておきましょう。
介護保険の住宅改修費の対象となる工事は、次の5種類に限定されています。
1.手すりの取り付け
2.段差の解消
3.滑り防止・移動を円滑にするための床材の変更
4.引き戸等への扉の変更
5.洋式便器等への便器の取り替え
加えて、これらの工事に伴って必要となる「付帯工事」も対象に含まれます。たとえば、手すりを取り付けるための壁の下地補強、段差を解消するための床の嵩上げに伴う周囲の調整、引き戸に変更する際の壁の改修などです。
逆にいうと、上記5種類に該当しない工事(キッチンの交換、壁紙の張り替え、外構工事など)は介護保険の対象にはなりません。対象になるかどうか判断に迷う工事は、事前にケアマネジャーや市区町村の窓口に確認しておきましょう。
介護保険の住宅改修費は、被保険者1人につき、生涯で通算20万円が上限です。一度に20万円を使い切る必要はなく、数回に分けて利用することもできます。
たとえば、最初に手すりの設置で8万円、2年後に段差解消で6万円を使った場合、残りの枠は6万円です。この残りを使い切るまで、何度でも制度を利用できます。
ただし、次の2つのケースでは20万円の枠がリセットされ、再び上限まで利用できるようになります。
●要介護度が3段階以上上がった場合(たとえば要支援1から要介護3へ)
●転居した場合(新しい住居で改めて利用できる)
自己負担の割合は、所得に応じて1割・2割・3割のいずれかに決まります。自分の負担割合は介護保険負担割合証で確認できます。
介護保険の住宅改修費を利用するには、要介護認定(要支援1〜2、要介護1〜5のいずれか)を受けていることが条件です。認定を受けていない場合は、まず市区町村の窓口で要介護認定の申請を行う必要があります。
申請の流れは次のとおりです。
1.市区町村の介護保険担当窓口、または地域包括支援センターに申請する
2.認定調査員による訪問調査を受ける
3.主治医の意見書が作成される
4.審査を経て認定結果が通知される(申請から約30日)
認定がなければ住宅改修費の支給対象にならないため、バリアフリーリフォームを考え始めたら早めに認定申請を進めておくことが大切です。
「まだ元気だから要介護認定は必要ない」と思われるかもしれませんが、転倒予防の手すり設置などであれば要支援1・2の方でも制度を利用できます。少しでも不安を感じたら、まずは地域包括支援センターに相談してみてください。
介護保険の住宅改修費で最も大切なポイントは、「工事を始める前に事前申請が必要」ということです。
この手続きを知らずに工事を終えてしまうと、介護保険の支給対象外となり、全額自費になってしまいます。申請の流れをステップごとに整理しておきましょう。
介護保険の住宅改修費は、ほかの介護サービスと異なり、工事の「前」と「後」の2回に分けて手続きが必要な仕組みになっています。
工事前の「事前申請」は、市区町村に「こういう改修工事を行います」と届け出て、承認を受ける手続きです。この承認を受けずに工事を進めてしまうと、たとえ対象工事であっても保険は適用されません。
「知らなかった」「急いで工事してしまった」という理由では、あとから申請しても認められないケースがほとんどです。事前申請は住宅改修費を受け取るための絶対条件と考えてください。
介護保険の住宅改修費の手続きは、次の6ステップで進みます。
1.ケアマネジャーに相談する。改修の必要性や希望する工事内容を伝え、「住宅改修が必要な理由書」を作成してもらいます。要支援の方は地域包括支援センターの担当者に依頼します
2.リフォーム会社に見積もりを依頼する。ケアマネジャーと相談しながら、具体的な工事内容を決め、見積書と工事図面を作成してもらいます
3.市区町村に事前申請を行う。申請書、理由書、見積書、工事図面、改修前の写真などを提出し、承認を受けます
4.承認を受けてから工事を実施する。事前申請の承認が下りたことを確認してから、工事に着手します
5.工事完了後に完了報告を行う。工事後の写真、領収書、工事完了届などを市区町村に提出します
6.審査を経て住宅改修費が支給される。書類に問題がなければ、指定の口座に保険給付分が振り込まれます
事前申請から承認までには1〜2週間かかることが多いため、工事スケジュールに余裕を持って計画しましょう。自治体によっては承認に時間がかかる場合もあるため、早めの準備がおすすめです。
「まずケアマネジャーに相談すべきか、リフォーム会社に相談すべきか」と迷う方もいるかもしれません。
おすすめは、最初にケアマネジャー(または地域包括支援センター)に相談することです。ケアマネジャーは、ご本人の身体状況や生活動線を把握したうえで「どこにどんな改修が必要か」を判断し、理由書を作成してくれます。介護保険の対象になるかどうかの見極めも、ケアマネジャーの意見が基準になります。
そのうえで、具体的な工事内容と見積もりはリフォーム会社に依頼します。介護保険の住宅改修に慣れたリフォーム会社であれば、申請に必要な書類(見積書・図面・写真)の準備もスムーズに対応してもらえます。
ケアマネジャーとリフォーム会社が連携して進めることで、「必要な改修」と「申請に通る工事内容」の両方をしっかり押さえた計画を立てることができます。シニア向けリフォーム全般についてはこちらの記事もあわせてご覧ください。シニア世代のためのリフォームガイド「安心・安全な住まい作り」
介護保険の住宅改修費は最大20万円の工事費が対象ですが、住宅全体をバリアフリー化する場合はこの上限を超えることがほとんどです。
そこで活用したいのが、自治体独自の補助金と税制優遇です。介護保険と組み合わせることで、自己負担をさらに抑えられる可能性があります。
多くの自治体が、介護保険とは別にバリアフリーリフォーム向けの補助金・助成金制度を独自に設けています。
たとえば、「高齢者住宅改修費助成」「障害者住宅改造費助成」「高齢者自立支援住宅改修」といった名称の制度があり、手すりの設置や浴室の改修、トイレの改修などが対象になるケースがあります。補助額は自治体によって異なりますが、数万〜数十万円規模の助成を受けられることもあります。
多くの自治体で、介護保険の住宅改修費と自治体独自の補助金は併用が可能です。ただし、同じ工事箇所に対して二重に補助を受けることはできない場合が多いため、事前にケアマネジャーや自治体の窓口に確認しておくことが大切です。
併用の考え方としては、介護保険の対象となる5種類の工事は介護保険で申請し、介護保険の対象外だが自治体補助金の対象になる工事(たとえば浴室全体の改修や浴槽の交換など)は自治体の補助金で申請する、という使い分けが基本になります。補助金制度全般についてはこちらの記事もご参考にどうぞ。マンションでも使えるリフォーム補助金まとめ
補助金に加えて、バリアフリーリフォームを行った年に所得税の控除が受けられる「住宅特定改修特別税額控除」という制度もあります。
この制度は、バリアフリー工事を含むリフォームの標準的な工事費用の10%が、その年の所得税から控除される仕組みです。対象となる工事費用には上限がありますが、介護保険や補助金とは別枠で使えるため、組み合わせることで自己負担をさらに圧縮できます。
対象となるのは、50歳以上の方、要介護・要支援認定を受けている方、障害者の方、または同居する親族にこれらの方がいるケースです。確定申告での手続きが必要ですが、見落としている方も多い制度なので、バリアフリーリフォームを行う際はぜひチェックしてみてください。
「介護保険は要介護認定が必要だから、まだ元気なうちは使えないのでは」と思う方もいるかもしれません。
たしかに介護保険の住宅改修費は要介護・要支援の認定が前提ですが、自治体の補助金の中には、年齢条件のみで利用できる制度(たとえば65歳以上の高齢者世帯を対象とした改修補助)もあります。こうした制度を使えば、「まだ元気なうちに備えておく」バリアフリーリフォームにも補助を活用できる可能性があります。
また、先ほど紹介した住宅特定改修特別税額控除も、要介護認定がなくても50歳以上であれば利用できます。
「今すぐ必要ではないけど、将来に備えて段差の解消や手すりの設置をしておきたい」という方は、ご自身が使える制度がないか、リフォーム会社や自治体の窓口に相談してみてください。早めに動いておくことで、いざというときに慌てずに済みます。将来を見据えたシニア向けリノベーションについてはこちらの記事もあわせてご覧ください。シニア向けリノベーションを考えてみよう
バリアフリーリフォームは、手すりの設置や段差の解消など比較的小規模な工事が中心ですが、住宅全体を整えると費用は数十万〜100万円を超えることもあります。
こうした費用を抑える手段として、介護保険の住宅改修費(最大18万円)、自治体独自の補助金、住宅特定改修特別税額控除という3つの制度を組み合わせることで、自己負担を大幅に減らせる可能性があります。
最も大切なのは、介護保険の住宅改修費を利用する場合は「工事前の事前申請」を忘れないこと。これを知らずに先に工事をしてしまうと、全額自費になってしまいます。ケアマネジャーに相談して理由書を作成してもらい、リフォーム会社と連携して見積書・図面を準備したうえで、市区町村に事前申請する。この流れを押さえておけば、手続きで迷うことはありません。
イエスリフォームでは、バリアフリーリフォームについて、介護保険の申請に必要な書類の作成サポートから施工まで一貫して対応しています。「どの制度が使えるか確認したい」「まず自宅を見てもらいたい」という段階からでも、お気軽にお問い合わせください。
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